褒め言葉のつもりでも安易に「似てる」と言わないほうがいいと思った話

 先日、あるライブハウスに行った時のこと。友人のバンドが出ていて、それを見に行った。終演後その友人と話しているところに、女性が来た。どうやら演奏がよかったのでCDを買わせてほしいとのことだった。自分もそのバンドが好きなので、自分のことのように嬉しかった。確かに嬉々に溢れていたのだ。この時までは。

 その女性は、キラキラとした目で友人に感想を述べる。ライブはたしかにかっこよかった。またファンが出来たと、なぜか自分が誇らしげになっていた。

 そのまま女性は、僕の顔をじっとみる。感想を述べるときのキラキラした目でそのままこちらを見る。僕の顔に何か付いてますか?と聞きそうなった瞬間、こう言われた。

「なんかめちゃくちゃ好きなバンドのボーカルに似てるんですよね、でもここにいるわけないしこんなに背高くないし違う人でした」

 なるほど。だから目を輝かせてこちらを見ていたわけか。「もう答え出てますけど、別人ですね」と当たり障りのない返しをし、軽い世間話や音楽の話に興じる。

 この時点では悪い気はしなかった。問題は家に帰ってからだ。

 ふと気になったので、そのバンドをYouTubeで探してみた。サムネイルの時点で嫌な予感がした。バンド名は伏せるが、それが絶妙に自分の苦手な顔だった。

 人の顔をとやかく言うつもりはない。ただ苦手な顔というのはどうしても存在する。自分はよくバンドのボーカルに似てると言われることがある。いつも名前が上がるバンドは自分が好きなバンド達であることが多いので、たいして嫌な気はしなかった。 

 しかし今回まったく知らないバンドのボーカルに似てると言われ、それが自分の苦手な顔だった。「これが同族嫌悪ってやつなのか」と深い溜息をついて、むき出しの鏡にそっとシートをかけた。

 褒め言葉のつもりで、自分が「かっこいいかわいい」と思っている人に似ていると、他人に言うことがたまにある。けど、それは受け手からしたら褒め言葉でない可能性がある。そもそも似てると言われることを嫌うひともいるし、似てるとされる対象の顔が好きじゃない可能性も高い。自分だってあまり似てると言われるのは好きではない。今まで上がっていた「似てるのリストが」自分もたまたま好きな顔だっただけだ。

 ある人に、無視「◯◯に似てるは、褒めてるつもりでも言われてる方はあまり良い気がしない」言われたのを思い出し、「あぁこういうことね」と改めて反省した次第。

 その人の顔が好きだったり人間性が好きなら、その人自身が好きだとどうにか伝えたほうが幾分かマシだ。僕も気をつけようと思った。